私が月1連載中の『帝国タイムス』の母体は、
日本最大手の企業の信用調査会社
「帝国データバンク」です。
同社の調査報告書の中には、
「経営者タイプ」を
人物像で分類する項目があります。
そして、同社の調査によると、
倒産した企業の経営者に最も多いタイプは
「計数面不得手」だそうです。
「計算が得意でない」という意味に限らず、
他人に任せきりで、
自分で把握していない場合も
含まれるということです。
さて今回、『帝国タイムス』での
連載15回目タイトルは、
「リーマンショックで会った千人の社長」にしました。
リーマンショックが起きたのは2008年9月15日。
私は翌月の10月から半年間、ほぼ毎日、
中小企業診断士として
セーフティネット窓口に携わり、
日々、中小企業の経営者と向き合いました。
その数は軽く1000人を超えています。
お一人お一人、30分~1時間を割いて、
3年分の決算書も一緒に見ていくんですけど、
なにしろ驚いたのは、
自分の会社の数字を把握していない
経営者の多さでした。
~ ~ ~
私は中小企業診断士の浪人中、
「財務」に苦しみました。
簿記3級の知識もないのに、
2級レベルの問題も出て来るし、
もう、さっぱりお手上げでした。
例えるなら、
バイエルも弾けないのに、
ベートーヴェンの「英雄」を
いきなり弾こうとしていたくらい
超、超、無謀でした。
専門の民間スクールに1年通いましたが、
財務の先生は頭が良すぎて、
「分からない」ことを分かってくれなかった。
このままだと一生、理解できない…。
どうしたもんかと私は考え、
「簿記3級から始めればいいんだ」
と、やっと気づきました。
3級レベルになったら、ましになりました。
なので、数字が不得手だという感覚を
私は誰よりも分かるつもりです。
でも、そのままにしていたら、
会社も人も自分も守れません。
簿記3級は必須というわけでは
ないんですけど、
理解しておくと慣れやすいというか、
便利だと思います。
そして時は流れてコロナショック。
私は窓口業務をやっていませんが、
知り合いの中小企業診断士が
同じ場所で毎日、経営者と対面しています。
その人に、リーマン時の私の感想を伝えると
「いまも変わっていないと思う」と言いました。
「融資を受けても、返せるのかな」と。
現代資本主義の父・渋沢栄一さんは言っています。
「右手にロマン、左手にそろばん」。
=「論語と算段」の両方が大事です、と。
経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。
====