きれいごとでいこう!

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。いい会社のいい話から私的なつぶやきまで、公私をつづります。

人間愛の残量

こんにちは。
経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。

 

先週、X(旧Twitter)に書いたことを
ブログにも残しておきたいと思います。

 

 

長く取材活動をしていると、
こういう話をたまに耳にするんです。

前の経営者は能力も人間力も素晴らしかった。
のびのび楽しく働ける環境があり、
そういう環境を育んでくれた前の経営者が
みんな好きだった。
会社に活気があり、業績も良かった。

ところがーー、
新しく就任した経営者は
前任者の良いところを全く踏襲しようとしない。
社員は戸惑い、悲しみ、不安がっている。

前の経営者時代に人間愛がたっぷり充電されていると、
その経営者がいなくなってもすぐには目減りしません。

が、新しい経営者になって充電されなくなれば、
残量は日ごとに減っていきます。

メーカーなら製品の魅力に陰が出始めるし、
サービス業ならサービス品質が落ち始めます。
ゆっくりと、ゆっくりと。


で、たぶんですけど、
新しい経営者が本気で「まずい」と気づくのは、
スマホの充電みたいに残量が20%を切って
赤い警告が出てからです。
ところが、目減りした人間愛は、
電池と違って急速回復は無理なので、
体制を戻すのはかなり大変なことになります。

その経営者にはもう無理で、
また新しい人を迎えるケースも珍しくありません。

 

こういう場合の経営者に見られるのは
本人が愛情不足であることです。
言い切っちゃうけど、たぶん合ってます。

だから、得意じゃない人間愛に
向き合うのは嫌なのです。

それとプライドがめっちゃ高い。
よって、前任者の真似をするのは癪だし、
教えてもらう気もない。
結果、自分が得意な理詰めでやろうとします。

ただ、人は理論や論理では動きません。
一時、動いたように見えても続きません。

人は結局のところ、感情で動くのです。

 

~  ~  ~

 

これは大企業でも、中規模企業でも、
小規模企業でも起こります。家族経営でもです。

昔の私は、社員から愛されていた前任の経営者に対して、
「なぜ後継者の条件や仕組みを整えて
 おかなかったのか?」と、思ったものですが、

その後も似たケースを聞くにつれ、
前任者に責任を押し付けられないこともあると
理解していきました。

いくら後継者の条件や仕組みを整えていても、
後から来た人がぶち壊すのは簡単だし、
経営者(社長)が心ある人でも、
その上の会長はそうとは限らないからです。

こういう話を聞くとほんと思うんですけど、
人の上に立つ人は、
人の哀しみが分かる人じゃないといけません。

また、子どもがかわいくて継がせたいなら、
役職を与える何十年も前に、
親としての愛情を与えるべきです。

人の哀しみや尊厳をちゃんと理解できるための
愛情を注いでから会社に迎えるのが、
根本的な経営指導じゃないかと思います。

人間愛の残量を高く持っておく。
実は経営にもすごく大事なことなんです。

 

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。

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