きれいごとでいこう!

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。いい会社のいい話から私的なつぶやきまで、公私をつづります。

原油高にまつわるお話 1 (歴史観の違い)


原油の高騰。消費者の一人として、食料品の値上げを実感しています。 なぜ、サウジアラビアは産出量を増やしてくれないのか? 理由は複雑に絡み合っていていますが、いくつかヒントがあるのです。
石油は、土地を掘って取り出すのはご存じの通りですが、 映画 『ジャイアンツ』で、ジェームス・ディーン扮する貧しい主人公が 石油を掘り当てたシーンをご存じですか? 空に向かってものすごい勢いで石油が地下から噴き出し、 彼は喜びのあまりに半狂乱となって黒い石油を浴びる、あの名シーンです。
中の気圧が高いために外へ飛び出る力も強くなるわけですが、 へたに穴を掘ってしまうと穴の気圧が下がり、石油の押し出る力が弱まる。 これを恐れているためにサウジアラビアはむやみに穴を掘らないことが 理由の一つなのです。
石油は『ジャイアンツ』くらい勢いよく地下から出てくれないと、 取り出すための装置を設置しなければならず、 いろいろお金がかかって困るわけです。
原油が地面からじわじわ出る場所は他国にも結構あるそうですが、 砂利など異物がたくさん混じるので、取り除く費用が馬鹿にならず、 とてもとても高い石油になってしまうとのこと。
また、新しい井戸を掘るとしても莫大なカネがかかるので、 これもなかなか井戸を増やそうとはしない理由となります。
さらにもう一つの理由、これが面白いんです。
せんだって、九州のLPガス企業「エネサンスグループ」(旧住商液化ガス) で顧客満足についての講演をさせていただいた折、 東京国際大学教授で(財)昭和経済研究所アラブ調査室室長の 渥美堅持氏による石油事情に関する講演をお聞きする機会がありました。 渥美教授は現地留学の経験もあり、イスラム文化に大変詳しい方です。 http://www.fusoujyuku.jp/lectures/index.html (渥美教授のHP)
教授によると、原油の産出量問題を考えるとき、 アラビア民族の歴史観が一つ大きなポイントになるとのことでした。
いまのまま石油を出し続けると、持つのはあと100年くらいと言われます。 日本人にとっても100年はそう長くない時間だと感じますよね。 でも、アラブの人たちにとっては、もっともっと短い時間に感じるのだそうです。
というのも、渥美教授がその昔、アラブの大学に留学されていたとき、 ちょうど開校1000年の年と重なりました。 しかし、不思議なことに何の祭もしない。 日本だったらそれこそ1周年、3周年、5、10、15と小刻みに祝うところです。 そこで総長に、なぜ祭りをしないのかを聞いたところ、何て答えたと思いますか?
「1000年はまだ短い」 そして続けて、 「3000年になったら祭りをしてもいいだろう。そのときはお前も来い」
おぉ、なんてユーモアのある…と笑ってしまいましたが、 渥美教授がおっしゃるには、「お前も来い」は冗談だとしても、 1000年は短い、というのは大真面目なのだそうです。全然ふざけてない。
そのくらい長期の歴史観を持つ人々なので、 あと100年しかもたないという現実は、彼らにとっては焦燥感などでは 片付けられない絶望感に近い感覚がある、というのです。 だから、産出量も増やしたくない。大事に大事に使おうとしているとのことでした。
それに、アラブは基本的にものづくりのない国ですから、 (民芸品などはもちろんありますが) 日本のように大きな工場で車や電化製品をつくって、 海外に輸出し、巨額のカネを海外から得るということはありません。 天然の資源を外国に売って、生計を立てているのです。 ですから余計に、油は彼らの命であって、枯渇は恐怖なのです。
そう簡単に産出量を増やせない背景はほかにもいろいろありますが、 思いもよらない理由を聞いて、なるほどと頷いたのでした。
まあ、とはいっても―、 漁業や農業、運送業、ほかいろいろな仕事に携わる方々に悪影響が 出ている今、「それでも何とかして!」と思ってしまいますね。






ジャイアンツ
ワーナー・ホーム・ビデオ
2003-09-05
ジェームス・ディーン


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