落ちてしまいます。
ロバはどうなるのでしょうか…。
~ ~ ~
動画をアップしてすぐ、
版元のじゃこめてい出版さんに、
動画紹介させていただいた旨をメールしました。
主旨は、お礼とおわびです。
お礼は言うまでもなく、問題はおわびです。
著作権に問題ある使用はしていませんが、
本来なら先に許可を取るのが誠意なのに、
急遽の収録で、できなかったことです。
私も書き手ですから、
そこは申し訳なく思っていました。
すると、じゃこめてい出版の代表で、
『古井戸に落ちたロバ』を担当された
石川眞貴さんから丁寧なお返事がありました。
早速 YouTubeを観てくださり、
「絵本の本質を理解されて、お伝えされていることは
とても素晴らしいことだと思っております」と。
文面から温かさが伝わり、とても安堵しました。
そして、
素晴らしい絵本『古井戸に落ちたロバ』の
誕生ストーリーを教えてくれました。
快諾くださいましたので、今日は、
この本の生みの親である石川眞貴さんの物語
をご紹介したいと思います。
絵本誕生のきっかけは、
石川さんがある仕事で会社に大きな損失を与えてしまい、
悩み苦しまれ、ある答えにたどり着いたことでした。
そんな時、この絵本の「再話」を担当された
北山耕平さんのブログに書かれたロバの話が
目に飛び込んできたそうです。
石川さんからのメールです。
「この物語を読んだ瞬間に、自分自身と重なり、
なにか強い力に突き動かされるように
いてもたってもいられなくなり、
ブログから北山耕平さんにメールを差し上げ、
お会いすることができました」
ところが、
北山さんは快諾されたものの、
石川さんは会社に大損失を与えていたことから、
自信をなくされていました。
企画が通るとも思えませんでした。
そこで石川さんは決心されます。
「自らの覚悟を示すために
印刷代を自費で払うことにしました。
もし売れなかったとしても会社への損失はなく、
周りからのプレッシャーも
はねつけることができるだろうという思いでした。
またこの絵本が売れなければ、
自分が出版人である才能はなかった
と、辞める覚悟もありました」
なかなかできることではありません。
そしてもう一つ、思いがありました。
「なにより、私と同じ悩みや苦しみを
乗り越えようとする人たちに
この絵本を届けることができたら、
もうそれで良いと思いました」
古来から、インディアンの人々が
口伝してきた大切な物語を
文章と絵で残すのは責任ある仕事だ。
石川さんはそのような自覚のもと、
出版までに1年半の歳月をかけられました。
YouTube動画で話しましたように、
私がこの話を知ったのは、また別のSNSでした。
そこでは、
「ロバは助かりました。めでたしめでたし」
で話が終わっていました。
ですので、
この絵本を読み進め、最後に
「一度も振り返ることはなかった」
の一文を見たとき、
心の深いところからはっとさせられ、
伝えなけなければならない、と思いました。
また、口伝ですから、
内容は少しずつ変化すると思いつつ、
本来の話では、ロバは留まったのか、去ったのか、
どちらなのか知りたいと思っていました。
今回、石川さんからのメールで
絵本の原型となった北山耕平さんのブログを知り、
やはり、ロバは自ら去るのだと分かりました。
また、
「一度も振り返ることはなかった」という
心に残る表現は、
石川さんが絵本を作るときに
「浮かび上がったヴィジョンを言葉にした」
ものだと知りました。
ロバが農夫の元を去り行く情景に、
さみしさ、切なさ、やるせなさを
抱かれる方もいると思いますし、
私のように誇りや気品を感じる方もいるでしょう。
答えは人それぞれの心にあり、
時間の流れの中で、感じ方が異なることも
またあると思います。
『古井戸に落ちたロバ』は、
東日本大震災のひと月前に生まれました。
本にとっても大打撃でしたが、
石川さんによると、
「(この年の)7月のチャリティ講演会には
60人以上の方々がご参加くださり、
被災地への寄付金もたくさん集まりました。
なにより、この絵本の物語こそ
これからの日本にとって必要な力になると、
参加者の皆さまの力がつながっていくのを感じました。
そこから大きなうねりとなっていきました」
初版2000部から版を重ね、
今では1万部近いロングセラーだそうです。
絵本で1万部は堂々のベストセラーです。
石川さんから始まった思いが絵本となり、
ゆっくりと着実に、そして長く、
人々の心に残っていく物語がここにもあります。
いただいたメールの最後に
「瀬戸川さまも、このインディアンの物語を
伝えるべくつながった一人であり、
受け継ぐ人であります」
と、有り難い言葉をいただきました。
動画をご覧くださった方もまた、
そうではないかと思います。
人生を考える物語
『古井戸に落ちたロバ』。
ぜひお手に取ってみてください。
感謝.。*☆+.*.。☆゚+..。*゚+。
経営ジャーナリスト・中小企業診断士の
瀬戸川礼子でした。