こんにちは。
経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。
本を読んで、プロ棋士のようだと思いました。
『教えないから人が育つ 横田英毅のリーダー学』（講談社）。
トヨタカーディーラーの中で、顧客満足度12年間連続No.1。
ネッツトヨタ南国の横田英毅さんの思想を、
元ソニー上席常務で工学博士の天外伺朗さんが、
巧みに引き出された良書です。 
横田さんは、会社で行なわれているすべてについて、
理由を論理的に説明できるそうです。
「こうすると、こうだから、こうなるよね。
だからこうしてみた。 すると、こうなって、
ああなってきて、いまこうなっている」というように。
将棋の羽生善治名人は、1000手先まで見るそうです。
「一つの変化なら10手、15手くらいまでですが、
枝分かれするので、100手とか、1000手とかの単位になります」。
ビジネスの世界も、
一つの変化が、多くの人、部署、お客さま、
取引先などに波及していきますよね。
しかも、将棋の駒と違って、一つひとつに感情がある。
人の感情も一緒に考えていくのは、
気の遠くなるような仕事ですが、
横田さんはこれをおざなりにしてこなかったのですね。
今日一日は、昨日までの経験でしか生きられません。
だから、昨日までの経験を、その都度、思い起こして、
反省して、改善して…ってやっていけば、いい明日がくる。
でも、これってすごく大変で面倒。
思考は見えないから、人から褒めてももらえないし、
反省や分析をしなくても明日は来るし、
まあいいかと思ってしまう。
でも横田さんはそうではなくて、
「働く動機が内側から湧き上がってくるような、
やりがいのある組織風土づくり」のために、
たくさんのことを日々考えられてきた。
行き着いたのは「教えないから人が育つ」ということ。
だから、遠回りでも、失敗してもいい。
むしろ、「失敗を期待する」くらいに肝が据わっていて、
失敗すると、こうなって、
これが起きて、ああなっていくから、
結果として失敗は良いことだ、と先の手が見えている。
結果、本当に人が育って、目的が叶えられる。
本にはもっと具体的に事例が書かれています。
この本は、「天外塾」が文字化されたもので
大部分は、横田さん、天外さん、塾生との会話形式です。
自分も塾に参加しているような気分で読み進められるし、
映画の『トロン』みたいに、自分がミクロ単位になって、
人の思考回路を探検している気分にもなれますよ。
そもそも、一目置かれている経営者が、
天下さんの塾に一人の塾生として普通に参加しちゃうという点が、
横田さんの学ぶ意欲や人柄を表しているかのようです。
有名な話ですが、ある大型セミナーの席でのこと、
「横田さんのリーダー像をひとことで言うと？」と聞かれた社員に、
「戦略的な存在感のなさ」と言わしめた
ネッツトヨタ南国の横田さん。
公言しちゃう社員さんもすごいし、
「うまい表現やな」と面白がっている横田さんもすごい（笑）。
闊達な組織風土が垣間見えるこうした伝説は、
どうやって生まれるに至ったのか。
謎解きしてくれる親切な本です。
ジャーナリストの瀬戸川礼子でした♪
横田さんにも登場していただいている拙著です。
『いい会社のよきリーダーが大切にしている７つのこと』
