和倉温泉の「多田屋」さんからの夕映えです。
街から少し離れた位置にあって、唯一、夕日が臨めます。
身動きもできない美しさでした。
爪のような三日月。
そして翌朝。多田屋さんは「水が近い宿」。
「利久」という棟がおすすめです。
部屋から釣竿がたらせる客室もあるんですよ。
お刺身もたいへん美味しかったです。
多田屋さんには、地元に知られるラブストーリーがあります。
子爵・鍋島家の令嬢である好子さんと、
この家の運転手をしていた苦学生の多田喜教さんは、
身分の違う恋に落ち、
喜教さんの実家がある和倉温泉に駆け落ちします。
やがて鍋島家も二人を許し、4人の子宝に恵まれ、宿も順調。
幸せな日々でした。
ところがある日、源泉を見に行った好子さんは、
足を滑らせて94℃の熱湯に転落し、死んでしまうのです。
駆け落ちまでして一緒になった喜教さんの悲しみは
いかばかりだったでしょうか…。
現在、高級旅館として人気を得ている多田屋は、
二人のストーリーをこんな風にとらえています。
家柄や財産をなげうって、
最後まで愛する人と人生をともにした好子さんは、
決して不幸ではなかったと。
多田屋はむしろ、誇りにしているそうです。
ちょっとしょっぱい和倉温泉。
多田屋さんのラブストーリーと美しい夕日を眺めにいかがですか。
おかみの多田佐永子さん、息子で次期社長の多田健太郎さんと。
実は、健太郎さんとは10年以上前に、東京でお会いしているのです。
何かの異業種交流会で名刺交換したことを私は覚えていて、
いつか「多田屋」さんに取材にうかがおうと、ずーっと思っていました。
ずいぶん遅くなっちゃいましたが、きっとこの日が一番いい日。
佐永子さんは少女のようにピュアで本当にチャーミング♡
健太郎さんは多田屋の輝ける未来を懸命に追求する実践者。
お嫁さんで若女将のやよいさんにもお会いできました。
フジテレビの番組「ノンフィクション」で、やよいさんを主人公にした
「花嫁のれん」シリーズが過去に3回放映されています。
すばらしいご縁に感謝です。
経営ジャーナリストの瀬戸川礼子でした。
<全国の女将さんを紹介した本のご紹介>
『おもてなしの原点 女将さんのこころ その一』
それでも前を向いて歩く、旅館の女将さん55人の胸の内。
1人4ページを割き、顔写真付きで、おもてなし、教育、考え方など
普段あまり聞けないさまざまな思いをご紹介しています。
緑色の「その二」に多田屋の多田佐永子さんもご登場です。
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