きれいごとでいこう!

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。いい会社のいい話から私的なつぶやきまで、公私をつづります。

日本理化学工業 ~恵比寿さまのお話~


こんにちは。
経営ジャーナリストの瀬戸川礼子です。


商売繁盛の神さまと言えば「恵比寿さま」。

七福神の中でも、
ふくよかな体と笑顔でひときわ目を惹きます。

見るからに「いいこと」を呼び寄せそうな風貌から、
“商売繁盛 担当”になっているんだなと
勝手に思っておりました--、

ら、いやいや、違いました。


先週、県立川崎図書館主宰のセミナーで、
思いがけず恵比寿さまのルーツを聞く機会がありました。


恵比寿さまは生まれつき足が悪く、
つまり身障者だったそうです。
両親ももちろん神さまでしたが、
その事実を受け入れられず、
船に乗せて子どもを海に流してしまいました。
神さまなのに~。

ところが、船はある港に無事到着し、
町の人に助けられます。


いつもニコニコと笑顔を絶やさない恵比寿さまは
人々に愛されました。
町の人気者で、いつも周りに人が集まっていました。


さて、商売で赤字になることを
「足が出る」と言いますが、
恵比寿さまは足が悪いので 「足が出ない」
足が出ないということは、転じて 「もうかる」。

こうして恵比寿さまは 「商売の神さま」
と呼ばれるようになったのです。

~  ~  ~


恵比寿さまのお話を聞かせてくださったのは、
日本理化学工業の大山泰弘会長です。
この方にお会いしたくて川崎へ出向いたのでした。


同社は、良質なチョークの製造で
国内シェア30%の企業です。 http://www.rikagaku.co.jp/


これまでゴミとされてきた帆立貝の殻を
粉末にしてチョークに用い、
なめらかな書き味と環境配慮の両立に成功しました。


また、「キットパス」という
粉の出ない固形マーカーも売っています。

amzn.to
商品そのものも興味深いのですが
それだけではありません。
75人中 55人が知的障害者の会社なのです。


このうちIQが50に満たない方が
40%近くを占めています。
(ちなみに一般人は IQ 100程度です)

そんな日本理化学工業の会長が語る
恵比寿さまの話には、
とても説得力があると思いませんか。

~  ~  ~


同社が心身障害者を受け入れることになるきっかけは、
1959(昭和34)年に、
養護学校の先生が飛び込みで来られたことでした。


「うちの生徒をどうか就職させてもらえないでしょうか」
当時、専務だった大山さんは断わりました。

それでも先生はやって来ましたが。
大山さんは、2度目も断わりました。

しかし先生はまたやって来たのです。
その3度目、先生は言いました。


「もう就職させてほしいとは言いません。
ただ、この子たちは一度も働く喜びを知らないまま、
一生を地方の施設で終えることになります。
せめて、一度でいい、
働く喜びを体験させてあげたいのです」



そこまで言われた大山さんは、
断わることができませんでした。
同情で、2人の生徒を2週間だけ預かることにしたのです。


この2人は時間に正確で、
懸命に与えられた仕事をし続けました。
昼休みのベルが鳴っても、
肩を叩くまで黙々とひたむきに取り組みました。
その姿を社員たちが見ていました。


2週間たって2人がさよならをする日。
社員たちがこぞって
大山さんのもとにやって来ました。

「2人を入れましょう。入れてあげてください。
私たちが面倒を見ますから」



こうして、
現在の日本理化学工業へとつながっていきました。
全国初の心身障害者雇用モデル工場にもなりました。


国からの補助金が出ていますから、
いじわるな人にはそれが目当てと思われたことでしょう。


でも、
「じゃあ補助金が出ればあなたはできるのか」
と問うたら、
その人たちは黙ってしまうはずです。
志がなければできません。


日本理化学工業は、次の言葉を掲げています。


人間の幸せは、
人に愛されること
人にほめられること
人の役に立つこと
人から必要とされること



この日のセミナーは、
いろいろな思いが交錯して
胸がいっぱいになりました。


日本理化学工業の話は
こちらの本に詳しく書かれています。
とてもいい本です。
重版に次ぐ重版を重ねているそうです↓

 

 

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。