きれいごとでいこう!

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。いい会社のいい話から私的なつぶやきまで、公私をつづります。

「宝来館」の女将・岩崎昭子さん

 

こんにちは。
経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。

さて、先日訪れた「宝来館」は、
岩手県釜石市・根浜(ねばま)海岸にある旅館です。

 

地元復興の発信源となっている宝来館。
旅行新聞のコラム「女将のこえ」のインタビューで訪ねました。



女将の岩崎昭子さんと。笑顔の美しさに胸を打たれます。
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岩崎さんは、あの日、スタッフのみなさんと裏山に逃げました。

 

ところが、津波に気づいていない地元の人々を助けようと山を下り、
一気に襲いかかってきた津波に飲まれてしまいます。

 

奇跡的に助かって本当によかったのですが、
なんとそのときの衝撃的な映像がこちらです(50秒後)。

 

津波は宝来館の2階まで到達し、
ぐちゃぐちゃになったそうですが、
いまはロビーもこんなに綺麗に。
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向かいは美しい松林と海。今度来るときはゆっくり歩きたい。
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宿の正面に津波の碑が建てられています。
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碑に掘られているのは、三陸に伝わる「津波てんでんこ」。
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「津波てんでんこ」

 

ともかく、上へ上へ逃げよ。

 

てんでんこで逃げよ

 

自分を助けよ。

 

この地まで、津波が来ること

 

そして、裏山へ逃げ

 

多くの人が助かったことを

 

後世に伝えてほしい




「てんでんこ」とは、てんでんばらばらに、という意味です。

 

誰かを助けようと思わずに、とにかく自分だけ逃げなさい、

 

自分の命だけ守りなさい、という教えです。




なぜなら、人を助けようとして、

 

その人まで命を落としてしまったり、

 

助かった人が「自分のせいで」と一生苦しむことがあるからです。




家はまた建てられる。物もまた買える。 でも、命だけは…。



「津波てんでんこ」は、そうはいっても助けたくなる人の心情に、

 

クサビを差す、大きな役割を担う言葉なのですね。



人を助けるために山を下りた女将の岩崎さんも、
結果的に助かったからよかったけれど、
あれは美談でもなんでもないんですと、おっしゃいました。



宝来館は、津波の衝撃をもろに受けました。

 

「なぜ同じ場所で再開するのですか」と、
岩崎さんはよく聞かれるそうです。

 

それに対して岩崎さんはこたえます。

 

「説明のしようがない気持ちがあるんだけれどね、
 私たちも自然の一部なのね。
 津波はまた来るよね。
 でもだから逃げるんじゃなくて、
 ここで受けた震災の傷は、
 ここの水、ここの土、ここの空気で治すしかないの。

 

 釜石の世界一の防波堤を、津波はたった6分で壊した。
 私たちの命を守るのは防波堤じゃなくて、
 私たち自身だということなの。

 

 津波が来るまでの数十分間に逃げれば、
 財産は持って行かれても、命は守れる。

 

 次にいつ来るかわからない津波のために、
 海にもっと大きな防波堤をつくって安心してしまうのは、
 命よりも財産を大事に考えた対策のように思える。
 それよりも、生き延びるための教育
 時間とお金をかけたほうがいい。

 

 宝来館が灯台となって、人が戻ってくれるように、
 灯りを求めて集まってくれるような存在になれたらと思うのね。
 生きるか死ぬか、どちらかに選ばれた人たちがいて、
 残された人の役割をやっていきたいということなの」



そこに信念を持った人がいる限り、再生する。



釜石・根浜海岸の「宝来館」さん。
こんどはゆっくりお風呂とお食事を楽しみたいな。
再び訪れたい宿がまた増えました。

 

おかみ3巻の表紙-文字大.jpg
 

講師で経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。