今日は中華の会食があって、食後にプ―アール茶を
いただいた折、このお茶は油を分解する力が強いので
フィンガーボールにも使われます、
とお店の方からお聞きしました。
子どものころ聞いた、
題名の分からないおとぎ話を思い出しました。
* 一応、フィンガーボールを説明すると、
指を洗うためにテーブルに用意される小さなボールのことで、
中に水やお茶が入っています。銀色のことが多いです。
~ ~ ~
ある国のお姫さまが、城を出て森に出かけたところ
迷子になってしまいました。
そこに、森に暮らす若者が通りかかり、
お姫さまを馬に乗せて、お城まで送ってあげました。
後日、お姫さまはお礼として、
若者を食事に招待します。
シャンデリアがきらめく部屋。
長テーブルにお姫さまと大臣たちが座り、若者は主賓席に。
そこへ、フィンガーボールが運ばれてきました。
若者はボールを両手に取ると、
躊躇なく、ごくごくと飲み干しました。
あっけにとられる大臣たち。
ところが、お姫さまは、
若者に恥をかかせないよう、
自分もごくごくと飲み始めたのです。
お姫さまの機転に気付いた大臣たちも、
慌てて、ごくごく。
若者は始終、
夢のような食事を楽しむことができました。
二度とお姫様に会う事も、
お城に入ることもありませんでしたが、
お姫さまとのひとときは、
楽しい思い出として心に残りました。
~ ~ ~
というお話。
温かいこの話が昔から好きなんです。
が、これを会食の席で話したら
別の意見が出て面白かった。
あ、それ飲み物ちゃうよ。
指を洗うんよ、と教えてあげて、
でも飲んじゃうのも面白いよねと、
みんなでワハハハと笑う路線。
当然ながら、若者をバカにして笑うんじゃなくて、
彼も一緒に「あ、そうなんだ」
とか言って笑っちゃう。
そのほうが、お城の人も、
若者も家に帰ってから後々まで笑えて
ずっと面白いんじゃないかという考え。
んーなるほど。
長年、恥をかかせない優しさを素敵だと思ってきたけれど、
そっちの路線もありかなと。
恥をかかせないよりも、
笑いに持っていくほうがきっと難しい。
そんな風にできたらもっと楽しいかも。
でもどうだろう。
若者はやはり恥だと思うかもしれない。
こんなことはもうないから、マナーを覚える必要もない。
ならば言わないでおくのは優しさなのでは?
正解はないのですが、
同じストーリーから全然違う結末
(しかもどちらもハッピーエンド)
が生まれるのって、とても面白いことです。
自分だったらどうしますか?
想像すると、結構、楽しいです。
~ ~ ~
それでこんな話も。
最近、このおとぎ話とそっくりの出来事が実際にあったそうです。
フィンガーボールを出さない文化圏の大臣が、
どこかの国の晩餐会に招かれた。
大臣は、若者と同じように、フィンガーボールをぐぐっと飲んだ。
すかさず、主催者の大統領か首相かわからないけど、
とにかく一番えらい人も、フィンガーボールを飲み干した。
ここまではお姫さまと同じ。
で、現実のえらい人は、
さらにウエーターにこう言ったそうです。
「今日はちょっと、ぬるいな」
お見事。
なにはともあれ、
優しさとウィットは人生を豊かにするということかな。
経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。