こんにちは。
講師で経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。
昨日は、山梨県立大学を中心に学生と社会人が学ぶ
講座 PENTAS YAMANASHIで
私が講師を担当しています「観光実践マネジメント講座」の3回目。
南三陸ホテル観洋の女将・阿部憲子さんに
ゲスト登壇いただきました。
東日本大震災によって、
800人もの尊い命が犠牲になった南三陸。
町全体で62%、中心部の80%を失いました。
もともと憲子さんとは取材でお世話になっていた私は
どうにも気になって仕方なく、
震災から3カ月後の2011年6月にホテルへ向かいました。
町は、壊滅という言葉通りでした。
これが現実なのか…と呆然とし、
ただ手を合わせることしかできませんでした。
ホテルは電気こそついていましたが、
まだ水も出ていない時でした。
にもかかわらず、憲子さんはとびきり明るいのです。
笑い声がきらきらと魔法の粉のように思えます。
私は本当に胸を打たれました。
それは「負けない、あきらめない」
という覚悟の姿に見えました。
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南三陸は、現在では、美しい海が戻り、
ホテルではめちゃめちゃ美味しい食事、
海を臨む開放的な露天風呂、町の観光と、
めいっぱい楽しめるエリアです。
ホテルが独自で毎朝運行する「語り部バス」は
学びの時間として超おすすめ。
仙台駅から無料送迎バスもありますよ。
ぜひ足を伸ばしてほしいです。
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さて、観光業には、
命を預かり守る仕事という一面があります。
また、未曾有のときこそリーダー力が欠かせませんし、
地域とともに生きる観点も必要です。
すべてを実践されてきた憲子さんの話は、
観光リスクマネジメントのど真ん中でした。
☆ 初期対応が重要であること。
☆心を強く持つこと。
☆地域の人口流出を防ぐ担い手との意識を持つこと。
ほかいくつものの教訓をいただきました。
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日本は地震列島であり、
気候変動も他国と同様、逃れられません。
災害はどの地域でも起こり得ることです。
憲子さんは常日頃から、
社員一人一人の特性を観察したり、
災害ニュースがあれば
「自分だったらどうするだろう?」
とイメージトレーニングしてきたそうです。
3.11から私は毎年、憲子さんを訪ねて
南三陸の旅を続けているので、
語り部バスにも毎回、乗っていますし、
憲子さんから直接お話をたびたびお聞きしていますが、
講義として改めてお話をうかがうと、
涙なしには聞けませんでした。
すさまじい未曾有の災害を穏やかに語ってくださるので、
ここに行きつくまでに
いったいどれほどの哀しみや葛藤があっただろうと
その思いを想像すると、胸がふるえました。
震災から3か月後、2011年6月に訪ねたときの一枚。
女将の阿部憲子さん(右)の明るさは希望でした。
意識してそういう姿を周りに見せていらしたと思います。
このときにいただいた南三陸名物「きらきら丼」。
憲子さんが考案・命名されました。
まだ蛇口から水も出ないうちにレストランを再開したんです。
魚屋さん、八百屋さん、おしぼり屋さんもこれによって
動き出すことができます。人口流出を少しでも防げます。
グラスを洗わなくていいように、水は紙コップです。
この丼一杯に込められた思い――。
2011のきらきら丼を忘れることはありません。
憲子さん、胸を打つ講義をありがとうございます。
この話が役立たない平穏な日々を送れることを願いつつ、
いざというときには、ちゃんと思い出して
命を守るために役立てます。
講師で経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。