全国の子どもたちは夏休み真っ盛りですね。
私の子ども時代はずいぶん遠くなりましたが、
今もはっきり覚えている思い出がいくつもあります。
そんなわけで、当ブログ「きれいごとでいこう!」では
夏休み特集「私の子ども時代」をお送りします♪
① 吃音だったあの頃 ~いまも隠れ吃音です~https://reikosetogawa.seesaa.net/article/201908article_3.html
② 廊下に立たされたあの日
https://reikosetogawa.seesaa.net/article/201908article_4.html
③ 私をいじめた小学校の先生に勝った瞬間
https://reikosetogawa.seesaa.net/article/201908article_6.html
今回は ①吃音だったあの頃 から。
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私は、気づいたときにはすでに吃音で、
症状は小学5年生くらいまで続きました。
大人の今も、症状は少し残っています。
仕事では、講演や研修など、
人前で喋る仕事もしているのですが、
突然、声が出なくなることがあるんです。
でも、だぶん誰にも気づかれていません。
気づかれないテクニックがございます♪
あとで書きます。
「吃音」(きつおん)は、昔は 「どもり」と言いましたが、
今は差別用語らしいので「吃音」で話を進めます。
吃音は原因不明。昔から世界各国に見られる症状です。
マリリン・モンローもそうだったとか。
つまり、私は、モンローと同類なのです。
↑ 覚えておいていただければと♡
吃音界で最も有名な人といえば、
イギリスのジョージ6世でしょう。
エリザベス女王のお父さんです。
『英国王のスピーチ』(2010年)という映画にもなって、
コリン・ファースは主演男優賞を受賞しました。
映画館で観たときは、痛いほどわかるのでドキドキしましたが、
とてもいい映画でした。
吃音には3つのタイプがあります。
下記は、日本吃音臨床研究会のHPより抜粋
http://kituonkenkyu.org/0002_001_01.html
1.連発(語音・音節の繰り返し)
「タタタタマゴ」のように音を繰り返す。
2.伸発(引き伸ばし)
「タ-マゴ」のように音を引き伸ばす。
3.難発(ブロック)
「・・・・・・タマゴ」のように音がつまって出てこない。
私は3の難発タイプなので、難発で進めます。
難発は、最初の音が出せなくなる症状です。
私の症状は軽かったので、ならない日もありましたが、
意図的に気にしないようにしていたから、
「大丈夫だった」という記憶にすり替えているのかもしれません。
ただ、軽度は軽度でした。
この、難発タイプは、最初の音さえ出れば、
あとはスラ~っと言葉が出てきます。
肝心なのは最初の一音が出るか出ないか。
私の場合、
「か・き・く・け・こ」は、力が入って出し難かったですが、
ふわっとした「は」や「ふ」が出せないこともありました。
結局、どの音も、出せないときは出せないのです。
出せない音はそのときどきで変わり、制御不能です。
自分ではどうしようもありません。努力も無駄です。
努力すればするほど、どつぼにはまってしまうんです。
なので、症状を受け入れた「う回路 作戦」を取っています。
りんごの「り」が出せない! となったら
「り」はさっさと捨てて(執着しない)
「アップル」とふざけて言ったり、
ブランコの「ブ」が出せない! となったら、
「ブ」に執着しないで
「あの揺れてるやつ」と言いかえる。
瞬時に言葉のう回路を探し、
行き止まりから抜け出す術を身につけました。
吃音のお陰で、
機転や開き直り力や語彙を培えたかもしれません(笑)
このように、難発タイプは、
誤魔化しやすいのが最大の利点です。
一方、ゆえに症状が理解されにくい難点も
持ち合わせています。
吃音のピークは小学校時代だったので、
やっかいだったのは国語の授業でした。
教科書の音読は誤魔化しがきかないからです。
しかも、お調子者の私ったら、
「読んでくれる人~?」
「は~い!」
という一連の流れのとき、
「今日は読めないかも…」と感づいているのに、
みんなと一緒に手を挙げちゃったりします。
で、そういうときに限って
「はい、礼子ちゃん」 と、当てられてしまう。
とりあえず、礼子ちゃんは平気なふりで、
「はい」と、立ち上がってみせます。
すると、奇跡的に最初の音が出て、
事なきを得ることもありました。
ところが、というか、やっぱりというか、
まったく音が出せないお手上げの時もありました。
そういうときは、黙って立ちすくむしかなく、
先生やみんなを混乱させることになります。
日常では誤魔化せているため、
誰も私の吃音に気付いていないからです。
それに、
私はとっても活発な女の子だったので
突然、黙りこくる私を、誰も理解できません。
教室はざわざわ、騒然とします。
でも、私だって仕方なかったんだもん。
そういうときは、甘んじて先生に怒られ、
男の子たちの嘲笑を全身に浴びました。
女の子たちは心配そうに私を見ていました。
こんな場面を何度か体験しても、不登校とは無縁でした。
繊細な私、デリケートな私、ではございますが♡、
「不幸に鈍感」みたいな部分も内包しておりまして、
この程度じゃ凹みませんでした。
そもそも自分で手を挙げちゃったんだし。
吃音だったけれど、音読が好きでした。
家でも一人でよくやっていたんです。
語彙が豊富な日本語って素晴らしいですよね。
だからそういう目に遭っても、
やっぱりまた手を挙げてしまう、
能天気な礼子ちゃんなのでした。
そしてついに、
“世紀のテクニック” を開発しました!
国語の時間、読み始めの音が出せないとき、
黙って立ちすくむのは、もうや~めた。
間違ったふりで最初の音を読み飛ばし、
出せる音から読み始めちゃうという、
まことに画期的な方法を編み出したのであります。
先生も教室のみんなも、
「はじめから読みなさい」とか、「そこじゃない」とか
やいやい言うけど
聞こえない、聞こえない。
そのまま知らんふりで読み進めます。
追い詰められた人っていうのは強いんですよ。
だって、やるしかないんだから。
そんな風に、適当に、吃音サバイバーしていたら、
いつの間にか、症状はほぼ消えていました。
小5のある日、
「あれ?そういえば出なくなっているな」
と気付きました。
とはいえ、症状は今も少し残っています。
前述のように、下手すると講演中に出たりします。
(あ~、来た来た、音が出せないよ~・・・)
でも、大丈夫。
パパっと、う回路を探すので。
「社員」と言いたいけど「しゃ」の音が出せないときは、
「働く人」と言いかえればいいし、
「気づきがある」と言いたいけど「き」が出せなければ、
「発見がある」とか言えばいい。
面白いことに、多少、言葉が詰まっても、
「お話の間(ま)が心地よく、言葉が響きました」
なんてアンケートに書いてくださったりするのです。
うれしいじゃないですか!😊
私の吃音がほぼ治まった要因は3つありそうです。
① 自然現象
幼少期に始まった吃音の7割は自然に消えます。
たまたま私もそこに入りました。
② 本人が悩まないようにした
厳密に言うと少しは悩みましたが、
「大したことじゃない」という思いが土台にありました。
「吃音で悩むのは危険だ」と本能的に察したので、
(かえって治らなくなりそう)
「将来もこのままだったらどうしよう」など、
まだ起きていないことは考えないようにしました。
精神的に自分を追い詰めなかったのは大きかったです。
③ 親が悩む姿を見せなかった
母が軽い吃音なので、「自分のせいで」と思うことは
あったのかもしれないけれど、そういう姿を私には
見せませんでした。これはホント有り難かった。
また、病院に連れて行かれることもなかったので、
それが②の「大したことじゃない」の証拠になりました。
※ ただし、専門の病院・クリニックで緩和するケースも
あるかもしれないので上記はあくまでも私の場合です。
軽度だから言えるのかもしれませんが、
吃音を経験して良かったのは、先に挙げたように
「開き直り力」「う回路を探す力」「語彙力」を
多少は養えたことです。
あと、物事をいちいち不安に思わない訓練も、
知らず知らずしていたのかもしれません。
また、なかなか理解してもらいにくい吃音の人の状態を
肌で理解できることも挙げられます。
前職の出版社にいるとき、
何度か、激しい吃音の方(読者)から
問い合わせの電話が入りました。
私以外の人は対応を嫌がるというか、怖がるので、
全部、私に回ってくるんですけど、
同類としてはウェルカムだったし、
この状態で電話をしてくる勇気に感服していました。
また普段も、たとえば誰かと2人でいて、
会話が続かずシーンとなっても平気です。
言葉が出せない状態を知っているから、
相手が吃音じゃなくても、
無理にしゃべらなくていいですよって思う。
吃音は世界的に人口の1%ほどいるんだそうです。
日本なら123万人いる計算です。
私のように「隠れ吃音」 は含まれるのかな?
この人数に含まれていないとすると、
本当はもっと多いと思います。
吃音の人は、それぞれがいろいろ考えていると思うので、
自らは開き直り、世間は寛容になっていけばいいですよねと思うし、
また、「吃音じゃない人」 に伝えたいのは、
喋り方が変わっていても、
いいでしょ別に♡ ということです。
言葉に詰まるって、誰にでもあることです。
吃音は、それがちょっと強くて特徴的。
どうか怪訝な顔をしないで、
普通に耳を傾けてほしいです。
世の中の吃音の人の中には、
外出するのが辛かったり、
友達がつくれなかったりする人もいるそうです。
見た目では分からないから、
変な人だと思われることもあると思います。
でも、自分では本当にコントロールできないんです。
仕方ないんです。
人の目が冷たくなると、焦って余計に喋りにくいんです。
そういうものだと、そのまま受け止めてほしいなあ。
大事なのは顔なんです。
親切な表情で聞いてほしい。
隠れ吃音でセミナー講師の瀬戸川礼子でした。