こんな話を聞きました。
商店街でお店を経営している方がいて、
隣のお店と長年、仲が悪いのだそうです。
ときに警察沙汰になるほどで、
その方は精神的に参ってしまい、
長い間、ウツを抱えてお店に立っていて悪化しています。
店舗は立地が悪く、店舗も老朽化、住民が減って将来性も低く、
何年間も赤字で回復の見込みもないそうです。
負債は増え続ける一方です…。
移転か閉店したほうがいいと周りに言われるけれど、
負けたくないから、がんばるそうです。
ずいぶん頑張るんだなと思ったのですが、
なにを、がんばるんだろう…。
何に負けたくないんだろう…。
頑張った先に何かあるのかな…。
気の毒な話だし、立ち直ってくれることを願いますが、
この話からは、戦う対象と意味が見えないな…と思ったのです。
幸せな道が見つかるといいな…。
~ ~ ~
それで、中学生か高校生のころに、
父から聞いた話を思い出しました。
世界のびっくりニュース的な番組で伝えていたそうです。
スイスのどこかに、山の管理をする事務所があって、
何かのときのために、常時、2人の男性が勤務しています。
2人は朝から夕方まで、一日中、事務所の中にいますが、
ひとことも会話がありません。
お互いに相手が大嫌いだからです。
嫌で嫌で仕方のない相手と、
一日中、2人きりで過ごすなんて
相当、苦痛じゃないかと思うのですが、
自分が辞めると、相手が喜ぶ。
それが悔しくて、2人とも意地でも辞めません。
今日も2人は、山の小さな事務所で働いています。
そんな、ホラーな話でした。
~ ~ ~
父は、いろいろな人がいるもんだなあと笑いながら、
ここまできたら修復はほとんど無理だろうから
自分ならほかを探すって言ってたんですけど、
父は正しい!と思います。
会社経営にも「撤退戦略」という言葉があります。
やってダメなら、さっさと逃げる。
余力をほかの活かせるところに使う。
市場はここだけじゃないから。
持っている時間は限られているから。
中途半端に参入して、そそくさと撤退するのは格好悪いけれど、
「意地でもがんばる」という美学は、ときに自滅を招いてしまう…。
撤退時期を見誤って倒産に至る会社って、案外、少なくないんです。
がんばるのはいい。
がんばるのは大事。
けれども、
幸せになるためにがんばるわけだから、
もしも、がんばるほどに不幸が増していたら、
そのがんばりは、きっと間違っている。
どうせがんばるなら、幸せに向かうがんばりをしたい。
それはどういう状態かというと、
恐らく、がんばっている様子を誰かに見られたとき、
楽しそうだったり、さわやかだったりしている状態。
自分自身も、精神的に明るく充実している状態。
そういうところに人は集いたくなるし、
やがては、好転していくのではないでしょうか。
経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。