きれいごとでいこう!

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子です。いい会社のいい話から私的なつぶやきまで、公私をつづります。

仏壇 買ってルンルン気分!


本題の前に、どうしても書いておきたい。
ソフトボール! ゴールドメダリスト、
オリンピックチャンピオン、おめでとう!

昨日・今日と、怖くてちょろちょろとしか
見ていられませんでしたが、
夢を叶えたチームの晴れ姿を
しかと見させていただきました。ありがとう!


~ ~ ~ 


さて、メインテーマです。

お仏壇ですが、買ったのは私ではないのです。

 

先だって、京都の仏具店 「㈱小堀」 の

専務取締役・小堀進氏の講演を

聞かせていただく機会があり、

お客様アンケートに「ルンルン気分!」

と書いてくださったお客さまがいた、

というお話を聞いたのでした。

 


笑いと涙の素晴らしい講演でした。

魂がこもっていました。

音楽とともに文字を読ませる

パワーポイントの作り方にも脱帽。

機会があればぜひ行かれてください。

 

㈱京仏具 小堀 → http://kobori.co.jp/


同社は、「顧客満足より、感動の顧客対応」

を目指している会社で、

きっかけは、顧客ニーズの変化だったそうです。

 

小堀氏いわく、

「営業ストーカーとも言えるほど

しつこく客先に足を運ぶ 営業マンを

『がんばるなあ』 と評価し、

購入してくれた時代は終わり、

『営業しません!』 を訴えることが

顧客に評価される時代になった」と。

 


そこで、思い切って営業部を廃止(リストラはなし)。

ネット集客や冊子請求を受ける形へと変更しました。

 

すると!見込み客がこれまでの10倍に。

顧客自ら来店してくれたり、

許可を得て営業するようにしたら、

成約も10倍以上になったとのことです。

 

『パーミションマーケティング』

という本がヒントになったそうです。

(パーミションとは許可のこと)

amzn.to

 


小堀は、さらなる顧客志向へと進んでいきます。

食品なら産地を公開するなど食の安全が求められる、

であれば、仏具は製作工程を公開することで

「心の安心」を提供しよう。


そして、注文者にネット上で

制作工程の画像が見られるサービスを開始しました。

 

職人さんを説得し、

工房にカメラを設置することになりましたが、

優秀な職人さんたちの、

さらに襟を正すことにつながったそうです。


小堀さんの会社は、

制作途中であっても、

最終的に仏壇となる木材を、

足でまたぐことを禁止しているのですが、

カメラを設置することで、

ついつい木材をまたいでしまう場面を

顧客に 見せてしまうことになるのでは…、

と少し不安だったそうです。

 

しかし、そんな心配は無用でした。

人に見られるということは、

その人の背筋をもっと伸ばすことにつながるんですね。

 


顧客満足よりも顧客感動を目指すため、

同社の顧客志向は加速します。

 

次に考えたのは、「体験」でした。

主客層の50代・60代は「体験」に感動する

という調査結果をネットで見つけ 出し、

旅行会社のツアーの一部に

自社見学を取り入れてもらったのです。

 


旅行客からすれば、

団体旅行のプログラムで「ついでに寄る」感覚ですが、

「最初で最後の出会いにならないように」と、

小堀社は知恵を絞ります。


旅行会社から事前に情報を得て、

翌日、お寺へ行くのを楽しみにしている旅行者には

寺の詳しい情報を、

誕生日の人にはプレゼントを、

ほかにもスナップ写真を取って現像したり、

「工房見学から旅支援へ」(小堀氏)と、

思考を変えて接待したのです。

 

もちろん、

自分たちがどれほどの思いで

仏具を作っているかも伝えます。

 


小堀さんは子どものころ、

家業である現在の仕事が嫌だったそうです。

人が死ねば儲かる、

とからかわれるのが辛かったのです。

 

それでも家業を継ぎ、

さまざまな人々の仏具に対する思いを知ることで

「不の心に悩む人の、役に立てる仕事」

と誇りを持つようになります。

 

仏壇に拝むことで、

残された人は生きる力や安らぎを得られるのだと。


長年貧しくて立派な仏壇を買えなかった人が、

やっと小堀で購入し、

ようやく落ち着いて供養ができる、

「仏壇買ってルンルン気分!」と

顧客アンケートに書いてくれた顧客もいたそうです。

 

ほかにも胸が震えるお話を伺いましたが、

それはぜひご本人の講演 聞いていただくとして、

とにかく小堀氏は、人

を幸せにできる商売だと 胸を張っておっしゃいます。

 


さて、前述した旅行の工房見学ですが、

自社の思いを聞いた人々は、

涙ながらに小堀に感謝の言葉を告げたり、

社員に握手を求めたり、

バスの中からいつまでも手を振り続けたり

してくれるそうです。

 

いい空気を残して、

旅行者はまた次の場所へと移動して行きますが、

「素晴らしい体験」「感動」「また行きたい」

という賛辞が、

旅行会社が取るアンケート用紙に並ぶそうです。

 


「でも一番うれしがっているのは私たち」

と小堀氏は語ります。

 


「お客さまに感動してもらうことで

自分たちも感動する。

店とお客さまがつくり出す絆(きずな)。

この『絆マーケティング』こそ

最強のマーケティングです」

 


「絆マーケティング」を

日々実践されている

小堀進氏の ブログ「仏壇日記」もぜひご覧ください。

私がお聞きしたセミナー風景は

8月8月に書かれていらっしゃいます。

http://blog.livedoor.jp/susumukobori/

 

経営ジャーナリスト・中小企業診断士の瀬戸川礼子でした。